子供は人類の父である
ブラッド・スウェット&ティアーズ
1968/2
「お得意さんからレコードを貰ったのだ。SX68サウンドだぞ。早速聞くのだ。早くプレーヤー出しなさい。」
「あら、困ったわね。ウチのレコードプレーヤー10年前に故障しちゃって・・・押入れにしまっちゃったと思うんだけど。」
「パパ、どうしたの?」
「お得意さんからレコードを貰ったのだ。SX68サウンドだぞ。早速聞くのだ。早くプレーヤー出しなさい。」
「ウチにそんなもの有ったっけ?僕知らないよ。」
「パパ、どうしたの。そんなに慌てて。」
「お得意さんからレコードを貰ったのだ。SX68サウンドだぞ。早速聞くのだ。早くプレーヤー出し・・
って何回言わせるのだ。いいから早く出せ。」
「だから今、動くの無くて。」
「では、聞けないのか?いやだいやだ、ワシは絶対聞く。何とかしろ。」
「何とかしろって言ってもねえ。今、お金無いし。」
「パパ、大丈夫だよ。僕に任せて。少しだけ時間ちょーだい。」
かっちんかっちんごそごそごそ
「おまちどうさま。これで聞けるよ。」
「まあ、はじめちゃん、直してくれたのね。」
「さすがワシの子だ。では、早速聞こう。・・・どうやってかけるのださっぱしわからん。」
「しょうがないパパねえ。で、どんなレコード?・・あら・・・・これは・・・」
「子供は人類のパパのママのパパなのだなのだ。」
「パパ、そんなこと書いてないよ。」
「そうなのだ。絶対絶対そうなのだ。そうじゃなきゃいやだ。」
「しょうがないパパねえ。で、どんなレコード?・・あら・・・・これは・・・」
「ママが針飛びしてるぞ。」
「私が女学生の頃、好きだったバンドじゃない。ちょっと待ってね・・・
ごそごそごそ

有ったわ。これが当時のML誌のレビュー。
あらこれってちょっと遅れて日本では発売されたのね。
すぐそばに”レッド・ツェッペリン登場”のレビュー。
ふむふむ・・・・
この文章、この限られたスペースで端的に素晴らしくこの盤のことを書いていると思うわ。
でも読んだ人の取り方によって、これじゃ買うか買わないか分かれちゃうじゃない。
肯定的に取ればいいんだけど。
時代はサージェント直後、ロックに可能性の希望が果てしなく広がっていたの。
アメリカで当時そのど真ん中にいたのがこのバンドの創始者、アル・クーパーさん。」
「歩くパーか?」
「パパ、違うよ。アル・クーパーさんだよ。」
「アルさんって人は、歌も上手くないし、オルガンだってほんと素人から始めたような人、
ギターも技術的には褒められたもんじゃないわ。いわゆるノン・ミュージシャンのハシリみたいな。
でも、しっかりとした耳と、確実な音の姿が頭の中に有ったのである。ブルース・プロジェクト後、
その構想によって召集されたのがこのランディ・ブレッカー氏をはじめとするラッパ隊そして弦隊。
その構想を具体化する為に、あのザ・バンドのプロデューサー、ジョン・サイモン氏を製作参謀に迎えて
その時のニュー・ヨークの空気、風景を音にしました。

子供は人類の父である
〜Child Is Father to the
Man
1968年2月発売

イントロの荘厳なる前フリに続いて
この自作のあえぐようにむせかえるブルースを聴きなさい。
この熱気を聴きなさい。古臭いなんて思うなら君の耳はどうかしてる。
熱い物に時は無縁である!
そしてティム・バックリー氏の朝焼けの”モーニング・グローリー”。これが夜明けよ。
そして自作の、これぞクーパー節、”マイ・デイズ・アー・ナンバード”。嗚呼たまらないっ!
そして粋、ニルソンちゃん作の”ウィズアウト・ハー”。ボッサ。お洒落・・・。
そして何とランディ・ニューマンおじさん作の”ジャスト・ワン・スマイル”、
裏返して必殺の熱唱・・・”アイ・キャント・クイット・ハー”・・・・
最後はキャロキンの曲から、終章へ。
名盤て、あまりに高く、神棚に祭り上げられるのは嫌だけど・・・
そっと近くにいつも置いて愛したいわ。いつまでも私の青春、そして希望、未来・・・」

「誰だ、この女?」
「ママ、急にキャラ変わったね。」
「何、言ってるの?もう晩ご飯の時間よ。駄々こねてないで早く食べなさい。」
「嫌だ、嫌だ。ワシはもっと聴きたいのだ。面倒なご託宣聞かされる前に外で聞いてやるのだ。」
「おれかけれすかー?」
「出掛けるのだ。お前のウチにプレーヤー、有るか?」
「ホウキしかあーりませーん。」
「うーむ。困った。どこで聴いたらいいのだ。むーー」
「パパ、我慢してここで聴きなよ。」
「何を我慢するのだ?うーむ。忘れてしまったぞ。」
「あーら、パパったら。おかしい。さ、みんな、ご飯よ。
そのことは食べてからゆっくりと考えましょ。」
「それでいいのか?これでいいのだ。それでいいんだろうなあ多分。」
(山)2009.6.24
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子供は人類の父である
Child
Is Father to the Man

Blood Sweat & Tears - I Love You
More Than You'll Ever Know
http://www.youtube.com/watch?v=Gd2LSKL9Yjs
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