Du Jazz Dans
Le Ravin Serge
Gainsbourg 1997
土曜中山の最終レースでヘイロー系に的を絞ってヤケクソで三連単馬券買ったら、300万円だ。
どうせあぶく銭、あぶくに相応しい使い方しようとその足で羽田に行き、ルフトハンザ航空機に乗る。モロッコに飛び、

屋台でシシカバブ喰い、パリへ。銭をフラン札とポケットに入るだけの小フランじゃら銭に変え、タクシーに乗り込み適当なところで降りた。 昼過ぎのここで探すのはカフェってとこだーな。ほら、映画の大脱走の最後でジェイムス・コバーンが辿り着いたようなとこ。
腹が減ったので本場のフランスパーンとやらを齧りながら探すと、さほど時間かからず見つかった。

カフェだからカフェを頼む。新聞広げて読めもしないのに広げながら夜を待つ。隣にドイツ軍将校などいないので、レジスタンスの襲撃の心配要らず。 日が落ちて思う存分クソ暇を味わったので、店を出て、裏通りへ。なるべく物騒なところがいい。ちゃらちゃらとJAPのおっさん歩く。
いかにもズタボロでやってるかやってないかわからんような酒場発見。

入るとフランス爺が数人、奥では移民の兄さんたちがトランプを。入るやいなや俺の顔を一斉に見やがって、あれは何か悪巧みをしようとしているに違いない。 カウンターに向かい、ヨボヨボの爺さんバーテンに酒を頼む。身振り手振りで何でもいいから飲ませろ。ヤツは俺を見もせず、まずレコードをかけた。 JAZZだ。

そして俺に酒をくれた。ポケットから小フラン出してカウンターにじゃら。手を振って足りんと言う。さらにじゃら。頷きやがった。 さてJAZZ。眩暈がしそうにいい。あまりの良さに呆けた顔をしてる俺を見て親父はレコードを指差して「どぅぶどどぅぶそわくけけ」。 気に入ったかって訊いてるのだな。何て言やーいいんだ。そうか 「ヴぃやん」 ニヤっと笑いやがった。これは何だ誰のJAZZだ。 「けつくせくさ?」 「セルジュ・がんずぶーふ」 ガラガラ声で何言ってるかわからん。セルジュ?聞いたことある。あのタバコばっか吸ってる女ったらし。ジャズもやるのか。 親父はすっかり喜んでべらべらと説明しだす。だからわからねーんだって。 どうやら大昔60’sの音らしい。そんなん俺でも音をききゃあわかる。 しかしフランス語ってのはジャズに合うんだな。わはは、”ここはどこ?”とか歌ってやがる。空耳アワーで耳掻き貰おう。 すっかり気分がのり、じゃら、酒、ごく、じゃら、酒、ごく。親父も飲め。じゃら、酒、ごく、ごく。 ちどり足でレコード裏返す。

「♪エラはうどん屋、でいいって、いいや」。こりゃいいや。 「♪何やらがドキドキ、メイド・イン・ジャパン」とか言ってる。訊こうと思ったがどうせわからんのでやめた。訊いた。やっぱりわからん。 やたらおかしくなりぎゃははと笑うと親父も笑う。レコードが終わるとジャケットに入れ、俺に手渡す。くれるのか? 礼をしようと、何か書くものくれ、コースターに”糞ったれジャズ、COOL。日本人より”って書いてやったらその漢字を見てやたら喜んだ。
店を出て暗闇通りを歩く。 後ろから棍棒で一撃・・・LP放り投げて倒れながら視界に入ったのはさっきの移民のガキども。
日の光が顔を差して、気が付くとやつら命までは獲らなかったんだな。ポケットをまさぐると小フランはすっからかん。 頭にはでかいコブの代金が。
レコードは・・?
まだ落ちていた。拾って空港に行く。札とパスポートはジャケットに入れておいたのだ、バカめ。
羽田に着くとその足で大井に向かい、第5レースで残りの有り金全部スった。
(山)2007.3.29
入手先参考、US盤,アマゾン
du
jazz動画
Gainsbourg - All the things you are
http://www.youtube.com/watch?v=iSA8wIGaENA
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