The Best of
Little Walter Little
Walter 1958
「では東芝ソニーワーナーテイチクトリオその他全部レコードの2017年度新譜販売促進会議を執り行います。」 「いつからうちの会社そんな長い名前になったんだ?」 「何だお前気付いて無かったのか。CDがまったく売れなくなって全部M&Aで合同されました。」 「うえ、知らなかったよ。やばいじゃん。」 「ご、ごほん。えー今年我が社が社運をかけて売り出すのはこのリトル・ウォルターのアルバム。で、いいんだな?課長。」 「はい。調査の結果、これが最適だと出ましたけど。」 「そうゆうことだ。ではジャケットを見てみよう。君君。」
どん
「わ、怖。地味。白黒。」 「ほんとにこれでいいのか?」 「はい、社長も押してます。」 「わ、それなら是非とも売らねばギミユアマネー。じゃあ君、これがいったい誰だか説明してもらおう。課長。」 「え、私よく知りません。」 「何だ、そりゃ。駄目じゃないか。仕方ないほれ、裏ジャケのライナー読みなさい。」 「エーゴです、これ」 「訳せばいいじゃないか。」 「わ、わたしがですか。」 部長、首に手を当ててヨコに斬る仕草をする。 課長泣きながら 「しますしますしますします家には娘と犬と妻が。それでは、えー、オリジナル・アルバム・パッケージよりライナーノート。 えー、ちなみにベストとなってますが、これはウォルター氏の1stアルバムだそうです。ハッタリだね。中身はマジそうなんすが。
” マリオン・ウォルター・ジェイコブズ、14歳、は街角に立ってハーモニカをでっかくブロウしておりました。 それはカラフルなシカゴの住人達にマックスウェル・ストリート・マーケットと呼ばれているとこでした。 ここには商品、中古、もっと中古のやつが陳列されてまして、歩道に沿ってですね、カートにはうづ高く積まれていたものじゃ。 あんたは何でも買うことが出来ますよ。中古コーヒーメーカーからかっこいい素敵なギンギンな1928年度製キャデラックのフェンダーから傷だらけのヴィクトリア・スパイシー・レコードまで。ここは、それと、ワンダーなストリート・ミュージシャン、メクラでも目明きでも、彼らのブツを提供していたのっす。スピリチュアルでブルースでストンプでポップなやつ。 日曜の朝はとりわけのセッションが行われました。聴衆の多さったらそりゃもう凄まじく。街の全部からどこから沸いてきたのだかわからんくらい来ました。のろまでさえ。バーゲンに群がり。彼らは残って聴いたものだよ。 若きジェイコブスは彼の口を走らせそして指を彼のハーモニカにピロピロしました、まるで超魔術マジシャンみたいに。それは「ビア樽ポルカ」、ルイス・ジョーダンのジャンプ・ナンバー(彼はその時ホットだったんだよ)もしくは最新のヒット・ナンバー。少年はリクエストされました、無茶苦茶な色んなのを。通りかかる人は皆強烈な印象を持ちました。「おおおおおおう、リトル・ウォルターを聞きな!」。それは付けられた仇名でした。確かに、マリオンはワイルドなマウス・ハーピストとして名前を持っていなかったのです。 リトル・ウォルターはハーモニカを6歳の頃から吹いていました。どうしてこのセコイ楽器をやろうと思ったかって?彼の答えは全ての人生を賭けるかのごとく魂に溢れたものです「もし野郎がピーナッツを拾ったとして、そいつで何かをなそうとしたとする(注:ジョージ・ワシントン・カーバーの言より引用らしい)、俺はハープを手にして、そいつで”何かを成し遂げようとしたんだ”。 ” 部長、泣いている。 「うおー、感動的な話じゃないかーーーっ。」 課長、泣いている。 「まだ訳さなければいけましぇんかー、マイケル」 「うむ、時間も無いし、もうええじゃろ。各自よく読んどくように。リクエストがあれば続きはまた課長に訳させる。無いか。あははは。」 「わ、良かった。ここからさらに3倍の長さありますから。では、肝心の音を聞いてみましょう。 1曲目は、なななななんと1955年のR&Bチャートで1位になった完璧シングル
マイ・ベイブ!どーぞ。」 ♪♪♪ 「うおーうおーうおー。ここれは、誰だか知らなくても最高の曲だー。フランク・シナトラでもメル・トーメだって言われたってわしゃ泣くぞ。でもウォルターちゃんじゃなきゃ駄目。」 「それはそれはすんごい気に入って下さいましたですね。ブチョー。」 「これは荒廃した現在のミュージック・シーンに鉄槌を下すぞ。さてどうやって売ろうか。」 「子豚のジャケでシングル出すってどーですか?」 「何でだ、平社員の内山田くん?」 「だって、このおっさん、こんな顔でっせ。」
どん
 「うわ、ストロンガー。うーん、その手もあるな。他に意見は?」 「B面1曲目の”JUKE”もヒットしたんですよね。」 「そう聞いておるが。」 「じゃ”19歳”ってタイトルじゃどう?南サオリのジャケにして。」 「OK、それ採用。それもいいがいっそのことその怖い顔をでっかいポスターにして東京中の地下鉄の通路にバリバリ貼ったら。」 「さすが部長、凄い光景になりそうです。でもアルバム違います、この顔のは。」 「OKOK、誰も気付かん。」 「じゃ、この”オフ・ザ・ウォール”って曲は、マイコーのジャクソンをウォルターおじさんが喰い付いてるジャケで出したらどーでしょう。」 「ぎゃはは。」 「ブルー・ライトって曲はヨコハマって小さく付けて、イシダアユミさんの顔をウォルターおじちゃんのにすげ替えたら?」 「ぎゃはは」 大盛り上がりです。
 「あ、何?そこの若くてヤングでナウな平社員君。何か言いたそうだけんど。」 「えーっとお、てゆうかあ、コピーに”ちょい悪親父もこうふんっ”てのどーですかー。」 「殺す。」 「えー、駄目っすかあ。ぢゃ、”ちょい駄目親父もこれで駄目”ってのわあ。」 「殺す。お前クビ。」 「それではアホはほっといてさっきの案で出そう出そう。」 かくしてリリースされたこのアルバム。日本国中の小学生が音楽の時間に勝手にハーモニカで吹き出すわ、スーパーの魚売り場でかかりまくるわ、そりゃもう大変。1500万枚売れました。この年のレコ大新人賞受賞。

(山)2006.10.19
入手先参考(日本盤、アマゾン)
試聴はこちらで(USベスト盤、アマゾン)
ワルター師匠動画 は・・・・無かったーーーーっ。
The English translation page : here.
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